総量規制とは借り過ぎ・貸し過ぎを防ぐ大切な法律

投稿日:2021.05.27 更新日:2021.06.17
総量規制とは

総量規制は貸金業者でお金を借りる場合、年収の1/3までしか借りられないという法律です。

「総量規制という言葉は聞いたことがあるし、なんとなく意味はわかるけど、詳しくはわからない」という人も多いはず。

そこでこの記事では、総量規制は何のために制定され、どんな借入が対象なのか等を、わかりやすく解説します。

まずは、総量規制がどんな目的で制定されたのかをみていきましょう。

この記事の執筆者【FP】田中宏一郎
編集長田中
国家資格の2級FP技能士を取得しています。 父の借金のせいで一家離散を経験。その後、母の勤め先から奨学金をもらって国立滋賀大学に進学しました。 借金の酸いも甘いしっている私が、正しい金融の...
この記事の監修者【FP】内山貴博
FP内山
証券会社の本社部門に勤務後、2006年に独立。 FP相談業務を中心に、セミナー、金融機関研修、FPや証券外務員の資格対策講座などを担当。 専門誌や情報サイトでの執筆も。 また、中小企業の...

総量規制は多重債務者をうまないための法律

総量規制とは、過度な借入をしないように年収などを基準に1/3を超える貸付けを禁じる法律です。

貸金業法第13条の2で定められており、2010年6月18日に施行されました。

貸金業法、過剰貸付け等の禁止より第十三条の二のキャプチャ

※貸金業法とは、消費者金融などの貸金業者からの借入について定められた法律

総量規制対象の借入をする場合、たとえば年収400万円なら約133万円が借入の上限金額なので、133万円以上の金額を借りることはできません。

借りすぎ貸しすぎを防ぐ総量規制は、以下のように貸金業者にとっても、お金を借りる利用者にとっても有益な法律です。

  • 貸金業者にとって
    返済能力を超える貸付けであるかどうかの判断基準の1つ
  • 利用者にとって
    過剰貸付による多重債務者をうまない
    返済に苦しむ人を救済する目的

ただし総量規制という法律があるからと言って、必ず誰しもが年収の1/3を借りられるわけではありません。

あくまで借入限度額を定め、法律上で制限しているだけです。

実際いくら貸すかは、総量規制の範囲内で貸金業者それぞれが独自の判断基準をつくり、審査をおこなって決めています。

FP内山FP内山
以下でも説明がありますが、1社で1/3ではありません。「総量規制にひっかからないよう別の業者で借りよう」と考える人もいますが、そうではなく、複数社から借りている場合はトータルで1/3までとなります。この後の記事を参考にしてください。

総量規制は年収の1/3までの借入に制限する法律だと分かったものの、なぜ貸金業者は利用者の借入状況を把握できるのか疑問ですよね。

その理由を次項で解説します。

貸金業者が利用者の借入状況を把握できる理由

貸金業者が利用者の借入額が年収の1/3を超えているかどうか把握できる理由は、指定信用情報機関を利用するからです。

指定信用情報機関とは、内閣総理大臣が指定した借入の情報管理をする機関のこと。

貸金業者が利用者の返済能力を超える貸付けをしないように、利用者の総借入金額を把握しています。

貸金業者は貸付契約が完了した際に知り得た情報は、必ず指定信用情報機関に提供する義務があります。

また、お金を貸すかどうか判断する場合は、必ず指定信用情報機関の顧客情報を利用する義務もあるのです。

CICのサイトより指定信用情報機関について記述されているキャプチャ

指定信用情報機関には、貸金業者同士が情報を共有し、確認し合うことにより、つねに最新の個人信用情報が登録されています。

個人信用情報とは、ローンを組んだりお金を借りたりした時の情報のこと。
住所や勤務先などの個人を特定できる情報だけでなく、契約内容や返済状況などの情報も登録され共有されています。

その他、必要であれば申込者に直近の源泉徴収票や収入証明書などの所得がわかる書類を提出してもらって、所得を確認することもありますよ。

FP内山FP内山
スマートフォンの月額利用料を払わなかった場合も信用情報に影響することがあります。多くの契約形態において、機種代を分割で払っているためため、ある意味ローンを返済しなかったという位置づけになるのです。借入をしていなくても信用情報に影響することがありますので、各種支払日、引落日などはきちんと確認しておいてください。

続いて、総量規制対象の貸金業者と対象外の金融機関を紹介します。

銀行は総量規制の対象ではない

総量規制は、貸金業法に基づいてお金を貸している貸金業者の貸付けが対象。

具体的には、消費者金融のカードローンやクレジットカード会社のクレジットカードを利用したキャッシング(キャッシング枠)、 信販会社の利用などが当てはまります。

銀行や信用金庫、労働金庫などは貸金業法に基づいて運営されていないので、総量規制の対象外です。

そのため、銀行カードローンやクレジットカードでの購入や支払い(ショッピング枠)は総量規制対象ではありません。

ちなみに、総量規制対象外の金融機関はそれぞれ以下の法律によって運営されています。

金融機関 対象の法律
銀行 銀行法
信用金庫 信用金庫法
労働金庫(ろうきん) 労働金庫法

銀行とて際限なく融資してくれない

総量規制対象ではない金融機関だからと言って、誰にでも制限なく融資してくれるわけではありません。

たとえば銀行は、「制限なく融資をしていては、総量規制を盛り込んだ貸金業法の意味がない」との金融庁からの指摘を受け、2017年頃から銀行も自主規制を開始しました。

独自の自主規制ルールを決め、貸しすぎ借りすぎを防ぐよう考えられています。

FP内山FP内山
総量規制いっぱいに借りている人が銀行のフリーローンを借りるというケースが増えたこともあり、銀行自体の自主規制がはじまりました。概ね総量規制と同様の収入の1/3を目安にしています。

続いて、法人や個人事業者の借入が総量規制の対象になるのかをみていきましょう。

法人の資金は総量規制対象外

事業資金は総量規制の対象外なので、法人の融資は総量規制に関係なく融資がおこなわれます。

ところが、原則、個人事業者は総量規制対象なので注意したいポイントです。

ただし、個人事業主の事業実績などにもとづいて返済が見込まれると判断された場合は、例外として収入の1/3を超えて貸付ける総量規制の例外貸付けがあります。

これが、総量規制の例外貸付けです。

FP内山FP内山
事業主の場合、借入の目的が事業の維持ということが想定されます。事業継続が困難になると雇用にも影響することになります。そういう観点からも例外が認められているものだと思われます。

ここで新たに出てきた”例外貸付け”という言葉を次項で説明します。

総量規制に関係なく借りられる例外貸付けと除外貸付け

総量規制には、一定の条件に当てはまる場合、年収の1/3という制限に関わらず融資がおこなわれる2つの貸付けがあるので紹介します。

  1. 例外貸付け
  2. 除外貸付け

例外貸付け

総量規制の例外貸付けとは、返済能力があって必要性や緊急性が高い借入について、例外的に貸付けが許される契約のことで、総量規制に関わらず借入が可能です。

ただし、借入額が借入残高に算入されます。

そのため、借入残高が総量規制の基準額を超えた場合、その後の借入ができなくなってしまうので、借入額に注意が必要です。

具体的に、例外貸付けには以下のような契約が該当します。

  • おまとめローン
  • 個人事業主への貸付け
  • 必要と認められる医療費の貸付けなど
※おまとめローンとは
複数社の借入を1社にまとめて金利を引き下げ、総返済額をおさえる方法。
例外貸付けに該当する具体例の説明に「顧客に一方的に有利になる借り換え」とあり、まさにおまとめローンのこと。

除外貸付け

除外貸付けとは、総量規制を適用するのが不適当と判断される契約のことで、数百万円や数千万円かかる費用を工面するのに、年収の1/3では足りない場合に適用されます。

例外貸付けと同様、総量規制に関わらず借入可能

例外貸付けとの違いは、借入額が借入残高に算入されない点です。

その後の借入に支障がないので、借入残高を気にせず、契約時に適当とみなされた融資額を借りられます。

除外貸付けに該当する契約は以下の通りです。

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 高額療養費の貸付けなど
FP内山FP内山
医療費については健康保険制度があるため、一定額を上回った高額療養費は還付されます。ただし、還付までに数ヵ月かかることもあり、その間の家計がやりくりできないというケースもあるでしょう。またそういう状況を危惧して、本格的な治療を躊躇している人もいるかもしれません。高額療養費貸付は除外貸付けとみなされる可能性がありますので、事前に確認をしてください。

最後に、総量規制に関するQ&Aを紹介します。

総量規制に関するQ&A

日本貸金業協会や金融庁などが総量規制について皆さんに知ってほしいことを、Q&Aにして紹介します。

Yahoo!知恵袋を100件確認した際に、以下の通り散見された質問もありますので、是非ご覧ください。

yahoo知恵袋で総量規制に対する質問を集めました

Q1 年収の1/3までしか借りられないのは1社ごとですか?

A1 いいえ。

1社からではなく、すべての借入総額が年収の1/3以内でなければなりません。

例)年収400万円の人がお金を借りる場合、融資額の上限が133万円とする

すでにA社から70万円、B社から50万円借りていた場合、C社からは13万円しか借りられません。

Q2 保証人がいたら総量規制に関係なく借りられますか?

A2 いいえ。

総量規制が適用される貸金業者でお金を借りる場合、たとえ保証人がいたとしても年収の1/3までの金額しか借りられません。

Q3 借入額には返済時の利息も含みますか?

A3 いいえ。

返済の利息は含まず、元金のみが総量規制の対象です。

Q4 年収とは給与だけを指しますか?

A4 いいえ。

年収は給与だけが対象ではありません。

例えば、年金の受給や事業ではない賃貸収入なども年収に含まれます。

ただし、宝くじが当選するなどの一時的な収入は含まれません。

FP内山FP内山
総量規制上限まで借りている人が、いわゆる「闇金」に向かうことがあります。そもそも借入額が多い中で、さらに闇金で借りてしまうと、苦しくなる一方です。総量規制上限に達している段階で、支出の見直し、返済方法の見直し(おまとめローンの活用など)などを行ってください。

まとめ

総量規制があると年収の1/3の金額しかお金を借りられないので、今まではなんだか損をしている気持ちだったかもしれません。

しかし、利用者にとって借りすぎを防ぐ重要な役割があり、利用者を守るための法律なので、わたしたちに損をさせるための法律ではないんです。

また総量規制の中には、例外貸付けや除外貸付けという、総量規制に関係なく融資がおこなわれる契約もあります。

皆さんが利用する可能性の高い、もしくは現在利用している住宅ローンやマイカーローンなどは、総量規制が適用されません。

年収の1/3までを限度として融資では間に合わない契約には必要な融資がおこなわれるので、わたしたちの生活を考えてくれています。

わたしたちが借金や返済で苦しまないように守りつつ、必要な融資はおこなわれる総量規制を正しく理解して、自分に見合う融資を受けたいですね。