求職中にハローワークでお金を借りられる融資制度と特例貸付

更新日:2024.02.21 投稿日:2023.07.31
ハローワークでお金を借りる方法とは

現在、無職で職探しをしている、お金のない方に朗報です。

ハローワークは仕事を見つけに行く場所だけでなく、融資もしてもらえることをご存じでしょうか?

ハローワークでは、条件をクリアすれば融資もおこなってくれます。

収入のない失業者が安心して求職活動できるようにと考えられているのです。

この記事では、失業者が借りられる3つの融資制度を紹介します。

求職者支援資金融資 職業訓練受講給付金だけでは生活費が足りない人への融資制度
生活福祉資金制度の総合支援資金 低所得世帯 障害者世帯 高齢者世帯 失業者などが対象の貸付制度
臨時特例つなぎ資金 公的な給付などが受理されているが給付などがスタートするまで生活費に困っている人への貸付制度

あわせて新型コロナウイルスの影響で失業したり収入が減ったりした人への特例貸付も紹介します。

まずは、求職者支援資金融資についてご覧ください。

この記事の執筆者【FP】田中宏一郎
編集長田中
2020年に2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得。 これまでに5社の消費者金融カードローン(アコム・プロミス・アイフル・SMBCモビット・LINEポケットマネー)、3社の銀行カード...
この記事の監修者【弁護士】松浦絢子
弁護士松浦
法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。 京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番...

求職者支援資金融資

求職者支援資金融資は、再就職に向けて職業訓練を受け、生活費10万円などの支給を受けられる職業訓練受講給付金だけでは生活資金が足りない人への融資制度です。

給付の内容を以下のとおり表にまとめました。

給付額 1人世帯:月額5万円まで
2人以上の世帯:月額10万円まで
(貸付額は1万円単位)
融資の
タイミング
職業訓練の受講予定月数をかけた金額を一括融資
融資対象期間 最大12ヶ月分
(1年超えて受講しても12ヶ月分しかもらえない)
利用対象年齢 65歳未満(未成年不可)
利用口座 労働金庫
(労働金庫の口座を持っていない人は要口座開設)
審査 労働金庫の審査あり
担保・保証人 不要

申請条件

求職者支援資金融資を受けるには、以下2つの申請条件をクリアする必要があります。

  1. 職業訓練受講給付金の支給決定を受けた人
  2. ハローワークで求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けた人

必要書類

求職者支援資金融資の申請時には、書類の提出が必要です。

いくつかの必要書類を以下に記載しますが、詳しい必要書類についてはハローワークで確認をお願いします。

  • 求職者支援資金融資要件確認書
  • 求職者支援資金融資確認申請書の写し
  • 職業訓練受講給付金支給状況の写し
  • ほか、本人確認書類など

※上記3つの書類は、ハローワークが発行する資格確認書類です。

返済方法

求職者支援資金融資の返済は、訓練期間中におこなう必要はありません

職業訓練が終わった時点や、就職が決まって訓練をやめた月の翌月から返済がスタートします。

さらに返済開始3ヶ月間は利息のみの返済でOKなので、実質の返済は4ヶ月目からです。

返済内容を表にまとめたのでご覧ください。

返済期間 融資総額50万円未満:5年以内
融資総額50万円以上:10年以内
※最終弁済年齢65歳
利息 あり
固定金利:年2.0%
※信用保証料として0.5%を含む
返済手段 自動引き落とし

求職者支援資金融資は銀行カードローンや消費者金融カードローンなどの金融機関と比べて低金利なので、返済負担が少ないのがメリットですね。

求職者支援資金融資を受けるためには、職業訓練受講給付金の受給が決定していることが条件です。

まだ職業訓練受講給付金を申請していない人は下記をご覧ください。

職業訓練受講給付金

職業訓練受講給付金は、ハローワークがおこなう公的職業訓練を受けている人に支給される給付金のこと。

職業訓練を受けている間は収入がないので、生活支援を目的とした給付です。

職業訓練受講給付金は以下の3つの手当で構成され、原則1ヶ月単位で支給されます。

3つの手当は以下のとおりです。

職業訓練受講手当 月10万円
通所手当 職業訓練実施機関までの経路に応じた所定額
(上限あり)
寄宿手当
(配偶者などと別居して職業訓練受ける場合)
月10,700円
申請条件

職業訓練受講手当を申請できるのは、特定求職者と呼ばれる人だけです。

特定求職者になるには、以下4つの条件にすべて該当しなければなりません

  1. ハローワークで求職の申し込みをしている人
  2. 雇用保険に加入しておらず失業手当を受給していない人
  3. 働く意思と能力がある人
  4. 職業訓練などの支援をおこなう必要があるとハローワークが認めた人

具体的にどんな状況の人が当てはまるのか、いくつか紹介します。

  • 失業給付受給が終了しても再就職できていない
  • 雇用保険の加入期間が足りず失業給付を受けられなかった
  • 就職が決まらないまま学校を卒業した など
受給条件

職業訓練受講給付金には、申請条件だけでなく受給要件もあります。

以下の7つある要件をすべてクリアしなければなりません。

  1. 本人の収入が8万円以下
  2. 世帯全体の収入が月25万円以下
  3. 世帯全体の金融資産が300万円以下
  4. 現在の住まい以外に土地や建物を所有していない
  5. すべての訓練実施日に出席している
  6. 世帯の中に同じ給付金を受給して訓練を受けている人がいない
  7. 過去3年以内に不正行為をして特定の給付金を受給していない
必要書類

職業訓練受講給付金を申請する際、事前審査と支給審査という2つの審査ごとに異なる書類が必要です。

審査別の必要書類は以下をご覧ください。

<事前審査に必要な書類>
  • マイナンバーカードなど個人番号を確認できる書類(原本)
  • 運転免許証など身元確認書類(マイナンバーカードあれば不要)
  • ハローワークから渡される6種類の届出書
  • 住民票の写し
  • 源泉徴収票など収入がわかる書類
  • 預金額50万円以上の預貯金通帳または残高証明
  • 給付金振込口座の通帳 など
<支給審査に必要な書類>
  • 職業訓練受講給付金支給申請書
  • 就職支援計画書
  • 給付金支給状況
支給までの流れ

職業訓練受講給付金を受け取るためには、書類の提出だけでは完了しません。

書類提出後に申請者がおこなうべき流れを紹介します。

面接や筆記試験などの選考を受ける
合格通知を受け取る
訓練開始日までにハローワークへ行く
ハローワークから支援指示を受ける

つづいては、生活福祉資金を紹介します。

弁護士松浦
専門家からの一言
松浦綜合法律事務所 / 松浦 絢子
職業訓練受講給付金を受け取るための要件は、かなり細かく決まっています。
実際の手続については、最寄りのハローワークに相談すると安心です。

生活福祉資金貸付制度の総合支援資金

生活福祉資金貸付制度とは、低所得世帯 障害者世帯 高齢者世帯 失業した人などが対象の貸付制度のこと。

生活福祉資金貸付制度には3つの支援資金があり、その内失業者に対して支援をしてくれるのが総合支援資金です。

総合支援資金とは、失業等で日常生活に困難を抱え、生活の立て直しのために一時的な資金を必要としている人に貸し付けをおこなってくれます。

総合支援資金の申請窓口はハローワークではなく社会福祉協議会なのでご注意ください。

社会福祉協議会の場所は都道府県・指定都市社会福祉協議会のホームページより確認できます。

申請条件

総合支援資金の申請には以下の8つの条件をクリアしなければなりません。

  1. ハローワークで求職申込と職業相談をしている人
  2. 失業などにより生計の維持が難しくなった低所得世帯の人
  3. 就労可能な状態で就職する努力をしている人
  4. 公的書類で本人確認できる人
  5. 原則離職から2年を超えていない人
  6. 住居があるもしくは住居を確保できる人
  7. 失業給付 職業訓練受講給付金 生活保護 年金など公的給付や公的貸付の受けられない人
  8. 初回申請時に生活困窮者自立相談支援事業の利用申込と面談を受けられる人

総合支援資金にある3つの貸付内容

総合支援資金には3つの貸付内容が用意されています。

必要に応じた内容に申請してください。

  1. 生活支援金
  2. 住宅入居費
  3. 一時生活再建費

生活支援金

生活支援金は、生活を再建するまでに必要な生活費の支援です。

ただし就職活動の状況や生活状況などの報告、相談、書類提出を定期的におこなうが必要があります。

貸付額と貸付期間は以下のとおりです。

貸付限度額 1人世帯:月額15万円
2人世帯以上:月額20万円
(貸付金額は離職直前3ヶ月の平均月収により算定)
貸付期間 原則3ヶ月
※延長が必要なら審査の上、最大12ヶ月借りられる

住宅入居費

住宅入居費は、賃貸借契約をするために必要な敷金礼金などの資金を上限40万円の範囲内で貸してくれます。

住宅入居費を利用する場合は、原則、住宅確保給付金の申請をしていることが前提です。

住宅確保給付金とは、離職などによって経済的に困窮し、住居を失ったもしくは失う恐れのある人に安定した住居の確保を図るために給付されるもの。

詳細は、住宅確保給付金にてご確認ください。

参考:厚生労働省 住宅確保給付金

一時生活再建費

一時生活再建費は、生活再建に必要な一時的費用を上限60万円の範囲内で貸してくれます。

参考まで貸付対象例をご覧ください。

  • 失業や減収によって滞納している家賃や公共料金の立替え
    (退去勧告がある場合)
  • 生活再建のために引っ越す場合の転居費用や家具什器費
    (かぐじゅうきひ)

家具什器とは家具家電などのことで、支給対象となる商品は自治体により異なります。

また家具什器費の上限額は単身世帯35万円以内、複数世帯は50万円以内です。

返済方法

総合支援金は貸付制度ですが、連帯保証人がいる場合は無利息でお金を貸してもらえます。

連帯保証人を立てない場合は1.5%の金利が発生しますので、返済の際は借りた金額と利息を支払ってください。

返済期間は以下のとおりです。

生活支援金 10年以内
住宅入居費 3年以内
一時生活再建費 5年以内

※いずれも据置期間3ヶ月

必要書類

総合支援資金を申請する際は、いくつかの書類を準備する必要があります。

3つの貸付内容ごとの必要書類は以下のとおりです。

  1. 生活支援費
    ●借入申込書
    ●運転免許証または健康保険証の写し
    ●世帯全員の住民票
    ●連帯保証人の収入を証明できる書類
    ●求職活動などによる世帯自立の計画書
    ●離職票など離職中であると証明できる書類
    ●世帯収入が減少していることを証明する書類
    ●履歴書の写し
    ●自立相談支援事業の利用および個人情報の取扱いに関する同意書
    ●ハローワークカード(離職中のみ)
  2. 住宅入居費
    ●不動産契約書の写し
    ●入居予定住宅に関する状況通知書の写し(不動産業者が発行)
    ●住居確保給付金支給対象者証明書の写し
  3. 一時生活再建費
    ●生活支援費の必要書類すべて
    ●請求書や見積書など社会福祉協議会が必要と認める書類
弁護士松浦
専門家からの一言
松浦綜合法律事務所 / 松浦 絢子
総合支援資金は利息も高くなく、連帯保証人がいれば無利息になるなど、消費者金融などと比べるとかなり有利な条件となっています。

支援制度の申請が受理されてから支援がスタートするまでの生活が困る人もいますよね。

そんな人が申請できる臨時特例つなぎ資金を次項で紹介します。

臨時特例つなぎ資金 

臨時特例つなぎ資金は、公的な給付制度や貸付制度の申請を受理されつつも、給付や貸し付けがスタートするまでの生活費に困っている人が申請できる貸付制度です。

連帯保証人不要な上に無利子で、上限10万円の範囲内でお金を貸してくれます。

支給のタイミングは、書類を審査し、貸し付けの適否が決定され、貸付決定通知書が交付されてからです。

条件が合う人は忘れず申請したいですね。

窓口は社会福祉協議会です。

申請条件

臨時特例つなぎ資金には以下の4つの条件がありますのでご覧ください。

  1. 住居のない離職者である
  2. 失業給付などの公的給付制度や生活福祉資金などの公的貸付制度の申請を受理されている
  3. 貸し付け開始までの生活が困窮している
  4. 申請者名義の口座がある

返済方法

臨時特例つなぎ資金の返済は、原則一括払いです。

給付金や融資を受けたときから1ヶ月以内に返済してください。

ただし一括返済が無理な場合は月賦払いが可能です。

貸し付け月の3ヶ月後から10回以内に返済してください。

必要書類

臨時特例つなぎ資金の申請時にはいつかの書類が必要です。

必要書類の一部を紹介しますが、詳しくはお住まいの社会福祉協議会で確認してください。

  • 公的給付金制度や公的貸付制度の申請が受理されていると証明できる書類
  • 預金通帳の写し
  • 借用書 など
弁護士松浦
専門家からの一言
松浦綜合法律事務所 / 松浦 絢子
臨時特例つなぎ資金は、緊急で資金が必要な人のために、比較的簡単な手続きで貸し付けを受けることができます。
このような制度をうまく利用したいですね。

ここからは、国が新型コロナウイルスの影響を考え、条件が緩和された特例貸付を紹介します。

ハローワークとは無関係ですが、失業者を救ってくれる手段の一つなのでぜひご覧ください。

新型コロナウイルスの影響による2つの特例貸付

新型コロナウイルス感染症の影響により、緊急小口資金と総合支援資金という制度が特例貸付をおこなっています。

どちらも無利子で借りられて、保証人不要。

窓口は市区町村社会福祉協議会です。

2つの制度をそれぞれみていきましょう。

緊急小口資金貸付(特例貸付)

緊急小口資金貸付(特例貸付)は、新型コロナウイルス感染症の影響で休業や収入の減少があり、緊急で一時的な資金貸付が必要な世帯が申請できます。

緊急小口資金の支給額は従来1世帯10万円以内ですが、下記に該当する世帯の貸付額は20万円以内に拡充されました。

  • 世帯に新型コロナウイルスの罹患者などがいる
  • 世帯に要介護者がいる
  • 世帯が4人以上いる
  • 新型コロナウイルス拡大防止による臨時休業で学校に通えない子供の世話が必要になった労働者がいる
  • 風邪症状などで新型コロナウイルスに感染している恐れがある小学生などの世話が必要になった労働者がいる
  • 世帯員に個人事業主がいるなど収入減少によって生活費が不足すると
  • 上記以外で貸付需要があると認められる場合

返済は2年以内ですが、据置期間が1年以内に設定されています。

感染症の影響がいつまで続くかわかりませんから、返済に猶予があるのは助かりますね。

総合支援資金(特例貸付)

総合支援資金(特例貸付)では、緊急小口資金や従来の総合支援資金の貸し付けが終了した人を対象に再貸付を実施してくれます。

新型コロナウイルスの影響により日常生活の維持が困難な世帯が対象です。

失業していなくても新型コロナウイルスの影響で収入が減少していれば対象になりますよ。

総合支援資金(特例貸付)の詳細は以下のとおりです。

貸付上限額 単身世帯:月15万年以内
二人世帯以上:月20万円以内
貸付期間 原則3ヶ月以内
返済期限 10年以内
(据置期間は1年以内)
弁護士松浦
専門家からの一言
松浦綜合法律事務所 / 松浦 絢子
今回紹介したような公的な貸付制度は、もともと生活に困窮している人を救済するためのものなので、審査は厳しくありません。
過去の破産歴なども調査されないことが通常ですので、まずは相談だけでもしてみるとよいでしょう。

まとめ

紹介した制度の中には、ハローワークが窓口でないものもありましたね。

ハローワークは働く意思のある人をサポートする役割があります。

そのため失業したら再就職のことだけでなく、生活再建のために何をすれば良いのかをぜひ相談に行っていただきたく、ハローワークが窓口でない制度も紹介しました。

また新型コロナウイルスが流行している今を乗り切るため、国が救済措置を用意してくれています。

一人で悩まず、家族間だけで抱え込まず、国のサポートを受けてくださいね。