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本屋さんだけど本業はデジタル!? 「YUYBOOKS」小野友資さんに聞く、仕事への向き合い方

「YUYBOOKS(ユイブックス)」。
この本屋さんの名前を聞いたことがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
京都松原京極商店街の「いろいろデザイン」というカフェ・デザイン事務所内にある本屋さんです。

YUYBOOKSの代表を務めるのは、デザイナーやクリエイティブ・ディレクターとして活動される小野友資さんです。
小野さんはデジタルの仕事を本業にされ、YUYBOOKSの代表として本屋さんもされているというかたです。
小野さんはデジタルのプロということもあり、YUYBOOKSには小野さんの個性が反映されています。

YUYBOOKSの公式HPでのキャッチコピーは「いろいろデザイン内の本屋です。デジタルばりばりつかってアナログなものを集めています。」
「デジタルばりばりつかって」という表現がなんとも面白いですね。

また小野さんはトークイベントに参加されたり、今年の8月末に開業予定の複合施設「出町座(仮)」の立ち上げに参加されるなど、さまざまな人と関わりを持ちながら精力的な活動をされています。
YUYBOOKSだけでなく、さまざまな仕事や、多くの人と共同のイベントなどをされている小野さんに私は興味を抱き、この度は取材をお願いしました。

──本日は取材をお受けいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

小野:よろしくお願いします。


★小野友資(おの・ゆうすけ)さん
Motion Designer / YUYBOOKS代表 / 京都精華大学非常勤講師
1980年、神戸生まれ。2007年より1-10designに参加、モーションデザイナーとしてウェブサイトからデジタルサイネージまで様々なフィールドに渡る制作に関わる。在籍中の2013年個人活動としてYUYBOOKSオープン。本をコミュニケーションツールとし、企画やデジタル作品を展開。2016年よりデジタルの活動をフリーランスへ。デジタル領域のクリエイティブディレクションから海外のスタートアップまで多岐にわたり取り組んでいる。デジタルばりばりつかってアナログなもの集めています。

効率的なやり方を自分なりに考えてやってきた

──なぜYUYBOOKSを立ち上げようと思ったのですか?

小野:本が好きで、あまり表に出てない本や流通してないような本を集めたりしていました。
そういった本を紹介したいなと思ったんです。
あと、そういう本に詳しいひとがお店に来てくれたら、また新しい本を紹介してもらえるなという思いもありました。
本に関する情報が自分に集まってくるのが嬉しいし、そういう場ができるんじゃないかということで立ち上げましたね。

──YUYBOOKSを始めるにあたり、本屋経営は独学で始められたのでしょうか?

小野:そうですね。
特に今まで、本屋、出版、ライターなど、いわゆる本にまつわる仕事をやってきたわけではありませんでした。
今まで本屋さんのような仕事をしていなかった分、本屋のルールみたいなものを知りません。

なので、「こうしたらいいんじゃないか」という効率的なやり方を自分なりに考えてやってきました。
お店には電話を置いてなくて、問い合わせはメールやSNSで対応しています。
手探りでYUYBOOKSをつくっていきましたが、これはむしろよかった点かなと思います。

あと、本屋さんを実際にやってるかたにも聞きましたね。
京都の本屋に限らず、本屋さんっていいひとが多くて、いろいろ教えてもらいました。

デジタルを使って情報を仕入れているというのがこの本屋の売りかもしれないです。
Amazonには載っていない本を調べて店に並べたりとかもしています。
なので、検索は上手いほうかもしれませんね。

ただ最近はどっちかと言うと調べるというよりも著者や出版社のほうから問い合わせてくださいます。
「この本をお店に置いてくれませんか」みたいな。
それが情報源としてはありがたいですね。

──こちらには一般書店で見ないような本が並んでいます。
店頭に置く本を選ぶ上でテーマなどは決められていますか?

小野:こういうものしか扱わない!みたいなのは全然なくて。
ただ、ちょっと気に留めた本は店に置いています。
例えば著者や装丁、デザインや内容も全部合わせて、僕がちょっとでも語れる本だったらそこに面白みがあってお客さんとの交流もできますし。
その本自体にドラマがついていたら、YUYBOOKSで扱う理由になるかなって思っています。
置いている本のジャンルで言ったらアート系が多いですね。

写真集も多く並ぶ写真集も多く並ぶ

カフェで本屋をはじめたきっかけ

──YUYBOOKSはいろいろデザイン内にお店があります。
こちらにお店を構えられた経緯についてお聞かせください。

小野:もともと別のところでやっていたんです。
でも違うところでやってみたいなと思っていた矢先、ここのオーナーのサノさんに「一緒にやりませんか」って誘ってもらいました。
それでここを見に来たときに「ここはいいな」と思い、「じゃあ、やりましょう」と速いテンポでいろいろデザイン内でやることが決まりました。

──そういった経緯があったのですね。
ここにした決め手はありますか?

小野:サノさんとはそれ以前から知り合いでしたが、ここを見たときに、「一緒にやったらお互い良い効果が出るんじゃないか」って思えたんです。

あと当時は会社員しながら本屋をやってたので、YUYBOOKSは土日しか開けることができませんでした。
でも、ここなら平日もカフェがオープンしてるときは本屋さんを開けることができます。

書店内にはカフェが併設されている

フラッシュが全盛期だった会社員時代

──小野さんが会社員だった時に立ち上げられたYUYBOOKSですが、会社員時代はどのようなお仕事をされていたのですか?

小野:Web系の仕事をしていました。
アプリをつくったり、フラッシュをつくったり、インスタレーションをつくったり。
他には動画やアニメーションをつくったりしていました。

※フラッシュ:PC画面上でマウスの動きに合わせてアニメーションや音が連動するグラフィックのこと。
※インスタレーション:室内や屋外に装置を置いて空間を構成する表現のこと。)

当時はフラッシュを使ってサイトをつくるというのが流行していたんです。
それで僕はフラッシャーという、フラッシュを使って広告をつくる仕事をメインでやっていました。
例えば、キャンペーンサイトやアプリをつくっていました。

さいわい、良い会社で良い時代だったんです。
周りのメンバーもみんな切磋琢磨してやっていました。

フラッシュが全盛の時代で、やったことがちゃんと評価されて賞もいっぱいとれたんです。
仕事が楽しくて仕方がなく、毎日、日付が変わるくらいまで仕事をしていました。

その会社で9年ほど勤めました。
そこを退職してフリーランスになった今は、クリエイティブ・ディレクターのような仕事をメインにしています。

──今、小野さんがされているクリエイティブ・ディレクターとはどのようなお仕事でしょうか?

小野:お仕事をいただいたら、僕がこうしたいという考えを開発者さんやデザイナーさんたちと共有してみんなで一緒につくっていくという仕事です。
それはWebやアプリもそうだし、インスタレーションもそうです。
けっこうデジタル全般に関わるような仕事をやっています。
一方で今でも手を動かしてアニメーションをつくったりもしています。

仕事も遊びも区別なく、楽しんでやっていきたい

──フリーランスになられた経緯についてお聞かせください。

小野:会社員をしていたころもすごく面白い仕事をいっぱいさせてもらっていたし、仕事もしやすい環境だったので、辞めようという気は全くなかったんですよ。
ただ、会社員というくくりのなかでできないこともあったし、フリーランスじゃなきゃできないことがけっこう出てきてしまったんです。

会社員だと僕はデベロッパーなので、来た仕事を打ち返すみたいな仕事がメインだったんですね。
でも、もっと自分で仕事をつくって、自分でかたちにするっていうのはフリーランスじゃなきゃできないなっていうのを思いました。

会社のなかでそういう感じのことをやってもいいよということは言われていましたが、なかなか一会社員としてそういうことを僕がうまくできなかったんです。
じゃあ、このタイミングでフリーランスになって自分のやりたいことをやってみようかな、チャレンジしてみようかなということで去年からフリーランスでやっています。

──チャレンジの意味もあってフリーランスになられたのですね。
フリーランスになられてからの仕事スタイルは?

小野さんはつい先日、新しいタブレット端末を購入されたそう。小野さんはつい先日、新しいタブレット端末を購入されたそう。

小野:平日は主にデジタルの仕事をして、土日は基本的にYUYBOOKSにいます。
本を見に来てくださる人がいれば、店頭で本について口で説明したりするときもあります。
レジは統一してもらっていて、カフェのかたに本のお会計もお願いしています。
なので、平日も土日も変わらずにお客様には本を買っていただけます。

──平日は本業のデジタルの仕事をされつつも、土日には本屋さんとしてお店にも立たれています。
仕事の軸をいろいろお持ちになり、休日も休みなくお仕事をされているという印象を受けます。
仕事についてはどのような考えをお持ちですか?

小野:好きなことを仕事にできちゃう時代なので、自分で情報をいくらでも収集できるし、自分でいくらでも情報を発信できるし、何でもつくれちゃいます。
じゃあ、楽しんで仕事をしていきたいなと思って、仕事も遊びも区別なくやっています。

「今どき」の本屋のつくり方を紹介

──いろいろスクールにて小野さんは「今どきの本屋のつくり方講座」の講師もされています。
そもそも「いろいろスクール」とは何なのですか?

小野:サノさんが立ち上げた学校事業なんです。
学生じゃなくても、社会人になりたての人が技術を身につけたいというときに、「ちょうどいい学校」みたいな話は聞きました。
デザインの講座があったり、写真の講座があったり、本屋の講座があったりします。
習い事というよりも、きっちり手に職をつけることができるような学校の形態というかたちですね。

──小野さんが担当されている「今どきの本屋のつくり方講座」ではどんなことをお教えになっているのでしょうか?

小野:「今どきの」ってついてるので、いわゆる本屋をつくる正規ルートではないつくり方を教えているんです。
もちろん正規ルートもきちっと教えています。
ただ正規ルートではこういうやり方があるけど、「今どき」はもっとこうしたほうがスムーズにつくれるよといったことを教えていますね。
お金や場所も含めて、みんな本屋さんをつくれちゃうよという授業をしています。

そのあと、ここの生徒さんには本の業界に就職したかたもいますし、本屋を実際につくったかたもいます。
この講座に来られるかたの年齢層はバラバラですね。

誘ってもらうと嬉しい。誘ってもらえるひとでありたい

──イベントがYUYBOOKSで行われることはありますか?

小野:ここでもしますよ。
ただスペース的にそう多くの人数は入らないので、店の規模にあったイベントとかをしています。
また、人数が多いときは他の場所を借りてイベントをやらせてもらっています。
それでも基本的に受け身なので(笑)
「一緒にやりません?」って言われたらありがたくやるっていう感じですね。

──小野さんはご自身のことを「受け身」と表現されましたが、良い意味で「流れに身を任す」姿がかっこいいなと思います。
小野さんは人との縁を大切にされているかたなのかなと思います。

小野:
すごいシャイなんですよ(笑)
あんまり人を誘えないんです。
じゃあ、誘ってもらうのを待つしかなくて。
だから誘ってもらったら嬉しいんですよ。
誘ってもらえるような人でありたいなとは思っています。

「出町座(仮)」の立ち上げに参加

──お話は変わります。
今年の8月末を目処に、映画館や本屋を内包した複合施設として「出町座(仮)」が出町枡形商店街につくられることが話題になっています。
小野さんはこの出町座の立ち上げに参加されています。
出町座を立ち上げることになった経緯についてお聞かせください。

小野:元・立誠小学校の跡地に「立誠シネマ」という劇場があったのですが、この立誠シネマが移転するということになりました。
そこの田中さんというかたが「移転した先の施設の1階で本屋さんをやりませんか」って元ホホホ座の梅野さんや、フィルムアート社の宮迫さんに声をかけたんですよ。
で、「やりましょう」ってなって宮迫さんが僕を誘ってくれました。

僕は映画も大好きなので、本屋だけでなく映画館も中にある施設には、興味がありました。
移転予定の場所が出町枡形商店街ということで、何人くらい人が来るんかなと思って一回ひとりで調査しに行ったんです。
商店街を見てたらひっきりなしに人が来てて、ここは人がいる場所だなって思ったんです。
僕もこれは面白そうだなと思って、「じゃあ、参加します」っていう流れで参加しました。

──出町座についても、声をかけてもらうかたちでの参加だったのですね。
声をかけられて実際に参加されるという小野さんの決断力や行動力もすごいと思います。
出町座では、どのようなことをやっていきたいと思われますか?

小野:出町枡形商店街に映画館や本屋さんが来るということに関して、商店街のかたやSNSのかたも「来てくれたー!」みたいに歓迎ムードなんですね。
じゃあ、ちゃんとまちの人に根付いた本屋をつくったほうがいいのかなと思っています。

海外と関わる仕事も増やしていきたい

──出町座の開業、とても楽しみです。
一方、出町座が始まってからも、小野さんはYUYBOOKSの店頭に立たれるそうですね。
YUYBOOKSとして今後の展望はありますか?

小野:展望は特にないんですよね。
ただ、海外との仕事をもっと増やしたいなっていうのはあるかもしれないです。

海外から本を置いてくださいっていう依頼があったり、直取引も結構しています。
でもそれとは別に海外で何かお店とか、イベントしたりとかはちょっとやってみたいなと思います。

お金ときちんと向き合ってみては

──Wa!の京都書店めぐり企画では、インタビューの最後に書店員のかたにオススメの本を1冊お願いしています。
ご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

<インタビュアー マル のプロフィール>
・大学3回生
・漫画が好き
・本が好きだが、文学に詳しくはない。
・幸せとは?働くとは?といったことに興味がある。

小野:『月極本』の3号です。
3号はお金についてちゃんと考えようみたいな特集です。

仕事に興味があるとのことなので、じゃあお金ときちんと向き合うこともいいんじゃない?と思ってこの本を薦めました。

月極本を出してるここの会社も新しい感じです。
デジタルを駆使して、アイデアで効率的にやってる感じが好きですね。
でも、全然効率的じゃない会社も好きなんですけどね(笑)

──オススメの本を選んでいただき、ありがとうございます。
またこの度は取材をお受けいただき、ありがとうございました。

小野:ありがとうございました。

編集後記

2017 年3月18日にMontag Booksellersにて行われたトークイベント「誰でも本屋さんになれる~少額取引サービスFoyer(ホワイエ)ってなに?~」で小野さんと初めてお会いしたことがきっかけで、この度取材をさせていただきました。

小野さんは本屋だけでなく、モーションデザイナーなどデジタルのお仕事も幅広く手がけられています。
様々な仕事の軸を持ち、楽しみながら仕事をされている姿勢がとてもかっこいいと思いました。

また小野さんは周囲の人から声がかかるかたちで、新しい企画やイベントに参加されることも多いかたです。
小野さんはインタビュー中も終始穏やかで、笑顔も素敵でした。
小野さんが周囲の人からたくさん声がかかるのも大いに納得できると感じました。

この度はインタビューをお受けいただき、ありがとうございました。

オススメいただいた本も面白く読ませていただきました。
今回オススメいただいた本は、『月極本3 特集「好きなお金、嫌いなお金」』(YADOKARI)です。
『月極本』は2015年12月に創刊された、文庫本サイズの雑誌です。
『月極本』創刊から最新号の3号までで取り上げられる主なテーマはミニマルライフであり、各号2000部限定で販売されています。

今回オススメいただいた3号ではお金についての特集が組まれており、証券会社を辞めてお金の本質を捉える旅に出たひとへのインタビューや、お金に関するエッセイ、リポートも掲載されています。
また、「個性派書店が選ぶ、お金を知るための50冊」では、小野さんのオススメ本が紹介されていました。
加えて、以前インタビューさせていただいた恵文社一乗寺店の鎌田さん、レティシア書房の小西さん、本屋Titleの辻山さんのオススメ本も掲載されていて、嬉しい気持ちになりました。

また、『月極本』は文庫本のようなサイズ感がとてもよく、手軽に読むことができる点が優れていると感じました。
内容も、「お金」についてインタビューやエッセイ、レポートや対談など様々なアプローチから取り上げられており、面白かったです。
ありがとうございました。

 

≫YUYBOOKSのホームページはコチラ

★YUYBOOKS(ユイブックス)
場所:〒600-8459 京都府京都市下京区天神前町327−2(いろいろデザイン内)
営業時間:15:00~23:30(火曜、水曜・定休)

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writerWRITERこの記事の作者
kawashima

この記事を書いたひと マル

京都の大学に通う学生ライター。 丸顔なので「マル」というペンネームに。 学生ライター仲間を募集しています!
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