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「誰にも追いつけないスピードで新しい鞄をつくりたい」25歳の鞄職人・川本さんの挑戦

こんにちは!

なで肩すぎてトートバックを肩にかけられない鈴木です。

突然ですが、「職人」という言葉にどのようなイメージをもっていますか?

15~18歳ぐらいからその道に進み、50年、60年と腕を磨き続ける・・・。
師匠のもとで長い長い下積み時代。
師匠の技を盗むべく、その傍らで背中を追いかけ、10年経ってようやく一人前。

これがぼくのイメージする職人だったのですが、先日、SNSタイムラインにこんな投稿が出現。

25歳の鞄職人!? しかも京都!!

ぼくがこれを見た日はちょうどクラウドファンディングの最終日で、すでに80万円という目標金額を大きく上回る154万円を集めていました。
クラウドファンディングの記事を読んでみると、脱サラして革の鞄職人を初めてまだ1年ぐらい。
にもかかわらず、自分のオリジナル鞄を作って販売までしている・・・。

どうゆうことだ!

脱サラ?
長い長い下積みは?

オリジナルブランド「かばんばか」を立ち上げた川本有哉さんのもとへ取材にいってきました。

鈴木:突然連絡してすみませんでした!
今日はよろしくお願いします。

川本:よろしくお願いします!

kawamoto2

鈴木:今回取材をお願いしたのは、ぼくが持っている職人のイメージと全然違うなあと思って、どんなひとなんだろうと会ってみたかったんです。
まだ2年目なのに自分のブランドをつくってしまうのってすごいことですよね!?

川本:いま、ほんとにありえへん環境で仕事をさせてもらってます。
師匠がすごいひとで、見て学べという感じではなく、わからんことがあったらなんでもきけ、と言ってくれるんです。

作業をしていると見にきてくれて、「こうしたらいいぞ」とアドバイスもくれるし。

師匠は50年以上職人をしていて、ここには4000型の金型があって、素材の革も山積みです。
ほんまに恵まれた、ありえへん環境です。

ずらりと並ぶ師匠の金型ずらりと並ぶ師匠の金型

鈴木:もともと鞄には詳しかったんですか? 前職が鞄業界とか?

川本:ぜんぜん、何にも知らなかったですし、もっとひどいですよ。
家庭科の成績は1とかだったんですよ。
玉結びもできませんでしたからね。

でも、できないところに飛び込みたいなあ、というのがあって、「もともとやってたから、できたんだろ」っていうのじゃなくて絶対ありえへんところからやったほうが、ほかの人もファイトがわくじゃないですか!

自分自身もまったく分からないところで全力でやってみたほうが楽しいんですよね。

鈴木:できないことをやってみて成功した、という原体験があったんですか?

川本:成功かぁ・・・・。
成功体験かどうかはわからないですけど、学生のときに大学で学生のチャレンジを応援するプロジェクトがあって、福井県でつくっていた赤カブとかの伝統野菜を漬物にして、それをリアカーに積めこんで、福井から京都まで鯖街道を売り歩いたんですよ。

4日で100キロぐらいあるいたのかな・・・商品もぜんぶ売ることができました。

京都に到着した日にちょうど天皇さんが来ていて、御所にリアカーのまま行って赤カブを献上しようとしたんですけど、全身真っ赤な服を着ていてあきらかに怪しい雰囲気をだしていたので、見事SPにとめられましたね。
「事前に言ってくれな」って言われて、事前に言ったらいけたんや!って笑

成功体験とは違うかもしれないですけど、やってみたらできた! という経験はたくさんありました。

ヒッチハイクで日本縦断したときは、まる二日車がつかまらない日もあれば、行き先を書き終わる前に声をかけられて乗れたときも。
運とご縁やなあって思いました。

鈴木:旅というか冒険みたいなことをやり始めたのは大学生になってからですか?

川本:いや、小学生のときからやってましたね。
実家が枚方なんですけど、チャリで京田辺にいったこともありました。
「京田辺で水晶がとれるらしいぞ。やばい、売れる!」って。

中学生のときは、大津とか神戸まで行きましたね、これもチャリで(笑)
遠いっていうところにロマンを感じるんですかね、男の子は。

鈴木:師匠のところにきて、最初は何をやったんですか?

川本:最初はミシンをコントロールするところからですね。
家庭用のミシンと同じように足で踏み込んで動かすんですけど、家庭用とはスピードとパワーが全然違うし、つま先側で踏み込んで動かして、かかと側で踏み込んでブレーキがかかるんですけど、めっちゃ難しかったです。

革は一度針で穴をあけたらもう閉じれないので、間違って縫っても直せないんですよ。
毎日朝から夜まで、ずっとミシンを踏んでるだけでしたね。

それからポーチをつくり始めるんですけど、上手く縫えなかったポーチが山のように増えていって・・・しんどかったですね。

ああ、最初いろいろありましたねえ。

鈴木:鞄をつくるにあたって師匠から縛りとかはなかったんですか? こういうのを作ってみなさいみたいな。

川本:ワイルドなボディバッグを作れって言われたんですよね。
いやぁ、つらかったですね、まじでつらかったです。
これどうしようって。

そのときに指定された革がそもそも派手だったので、シンプルなデザインでもいいものになると思ったんですけど、師匠は「世の中にないものをつくれ」って。
ぼくもそうしたいっていうのがあるんですけど、指定される革もめちゃくちゃ難しくて、半年ぐらいボディバッグしばりがとれなくて・・・。

このままではやばいなってなって、本気になりました。

鈴木:師匠も難題をだしてそれを突破して欲しかったんでしょうね。
引き継いでいる師匠のこだわりってありますか?

川本:うちは芯材と裏地をつけるんですよ。
裏地がついてない鞄もたくさんありますけど、心材と裏地をつけるのはめっちゃ工程量が多いし、めっちゃ頭を使うんです。

そこはかなりこだわってつけていますね。
丈夫ですし物持ちの良さが変わってくるので。

鈴木:こんな鞄をつくりたい、というのはありますか?

川本:ぼく、どんな鞄でもつくれるんですよ。

「こういう鞄がほしいけど、自分でどんなのがいいか具体的にイメージできない」というひともいるはず。

かばっくは肩にかけたまま荷物が出せるというのが特徴で、 もともとリュックが好きだけど、中身を出すときに毎回おろすの嫌だったんです。

あとは、ぼくは動物の鞄とかかわいいのが好きなんですよ。
とはいえこの歳でリラックマの鞄なんて背負えないし、動物鞄もいい大人が背負ってたらイケてないじゃないですか笑

いろいろ考えた結果、鞄をおろさずに荷物を取り出せて、動物のカタチをした大人でもかわいく背負ってもらえるものになりました。

かばっくオリジナル商品の「かばっく」

チェスの駒のカタチをした鞄を作りたいんですよ。
ビショップとかルークとか、めっちゃかっこいいじゃないですか!? 需要があるのかはわからないですけど(笑)
たぶん、ひとりくらいは欲しいってひとがいるんじゃないかなぁ。

鈴木:かばっくはリュックの問題点を解決する鞄でもあるんですね。
ぼくもリュックがめっちゃ好きなんですけど、すごい悩みがあるんです。

川本:なんですか?

鈴木:実は、ものすごくなで肩で・・・。
肩から落ちるんですよね。
トートバッグだと肩だけで持つことはできなくて、片手で持っていないと120パーセント落ちます。

川本:ちょっと鞄を背負ってみてもらっていいですか?

鈴木:もちろん。

(自分の鞄を背負う鈴木)

川本:うわーーーなで肩ですねえ!

鈴木:アウトドアっぽいリュックは胸の前でとめるホックがついてるんですけどね。
そのホックの部分だけをネットで買ってつけてみたんですけど、まぁいろいろ不都合だったんです。

川本:・・・。

真剣な表情になる川本さん真剣な表情になる川本さん

川本:・・・。

スタスタと何かを探しにいく川本さんスタスタと何かを探しにいく川本さん

川本:ストラップの付け根のところを束ねるのはどうでしょう?
ちょっと背負ってみてください。

鈴木:いい!

川本:束ねるのをつくってきますね、ちょっと待っててください!
時間大丈夫ですか?

鈴木:え・・・いいんですか?

川本:すぐつくりますんで!

革を選ぶ。「黒か紺がいいですかね?」と。革を選ぶ。「黒か紺がいいですかね?」と。
採寸。採寸。
裁断機に革をのせ、裁断機に革をのせ、
革のうえに金型をおき、プレス!革のうえに金型をおき、プレス!
型どおりに革が裁断されました型どおりに革が裁断されました

このあと、別の作業部屋でボタンを縫いつけてきてくださり・・・
あっという間に完成!

世界中のなで肩が待っていたプロトタイプが完成!世界中のなで肩が待っていたプロトタイプが完成!

鈴木:こんなステキなものをつくっていただき、ありがとうございます!
最後に、こういう鞄職人になりたい、というイメージはありますか?

川本:これからの職人はなんでもできないとあかんなと思っています。
ぼくは分かりやすく鞄職人って言ってるんですけど、鞄職人は「縫製」作業をするひとのことを言うんですね。
鞄の作業工程は、デザインをして、設計をして、それを型紙におこして、縫製して、販売するというふうに分業なんですね。

でもこれからは全部自分でできたほうが面白いなあと思ってます。

将来的には「これつくりたい!」って思ったら次の日までにそれをつくりあげるようになりたい。
素材を変えたり、プリント柄をかえたりしてパターンを増やすことはできるけど、鞄のカタチ自体に特徴がある鞄って意外と少なくて。

どんどん作る速度をあげて、どんどんおもしろいものが作れるようになったらいいなぁと。
テクノロジーがどんどん発展して、パクられようが、それを超えるような新しいカタチの鞄を毎日つくってなんだこの鞄屋は!って思われるような今までにない鞄屋になりたいですね。

元気ハツラツで笑顔で楽しく話していただいた川本さんですが、なで肩の悩みを伝えたとたんに表情がかわり、その真剣な眼差しから「本当にいいものをつくりたい」という熱意を感じました。

「かばっく」以外のアイデアもたくさん考えているそうで、これからどんな楽しい鞄を発表されるのか楽しみです。

鞄屋「かばんばか」
instagram:@kabanbaka

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Wa!編集部

この記事を書いたひと Wa!編集部

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